遺言イメージ

寝たきりの義父が残せる遺言状とは

最近では、「終活」とか、「エンディングノート」という言葉をメディアからよく耳にするようになりました。
一種の流行なのでしょう。
それが、私の義父の耳にも届いていました。

義父は、神経の伝達が正常に機能しておらず、筋肉が衰えていく進行性の病気を患っています。
特定疾患です。
異変に気付いたのは晩年で、体調不良を訴え、どうにも体が思うように動かなくなり、体力勝負の仕事をしていた義父は定年退職前に早期退職という道を選ぶ他なくなりました。

そしてしばらく後、胸の違和感を覚え病院にかかるようになりました。
病院では心電図やエコーなどで検査をするものの、原因の特定には至りませんでした。
今考えればそれは当然だったのです。

そして、心臓を診てもらっていた病院の神経内科にもかかるようになり、
筋力がどんどん落ちていく一方でやがて心筋も動かなくなってしまい死に至る病気で、
治療方法は今はまだないと宣告されたのです。

義父は、これまで健康に大変自信があるタイプでした。
風邪もろくにひかず、家族中がインフルエンザにかかっても看病もしないが罹患もしない、
そういうタイプだったそうです。
なのに病気にかかったと思ったら風邪どころか不治の病。
家族の落胆は大きいものでした。

やがて、病気の進行により義父は呼吸筋を侵されます。
呼吸器を付けて生活しなければならなくなりました。
それからは、ずっと入院生活です。
食事は胃ろうから、声も出ません。

大好きだった飴をリハビリ程度に舐めること、孫の見舞いを待つこと、サスペンスものの海外ドラマを観る事がささやかな楽しみになりました。
そんな義父が、遺言について考えをめぐらせる機会があったようです。

私は嫁という立場で、相続とは全く関係ない身だからこそ聞かされたのかもしれません。

義父からこんなメールが届いたのです。
「ただの興味なんですが、自筆が出来ない、声が出せない場合に有効な遺言の残し方を調べてもらえませんか」このような病気の義父にとって、ペンを持ち筆圧をかけるなんという行為はとても時間がかかり、大変な作業なのです。

入院当初は少しは出来たクロスワードパズルも、最近ではめっきり出来なくなりました。
インターネットで少し調べて、こう返信しました
「自筆は署名だけで、あとは代筆が可能な遺言の様式もありますが、公証人の立会いが必要みたいです。
こういうことは難しいから、必要なら専門家に説明してもらいますか。」と。

「ただの興味なんでそこまでは必要ありません。方法がありそうなだけでも、まだましなんですね。」
と返信がありました。

確かに義父は、おそらく財産の管理をしたことがないので預金額すら知らないでしょう。
財産で認識しているのは土地家屋など毎日目に入るものだけなんじゃないかと思います。
そういったことは姑が全部きっちり管理しているので、任せっきりのはずです。

義父は、おそらく財産の振り分けのための遺言というようなものではなく、
メッセージを残したいのではないかと思っています。
義父と同じ病院には、意識もほとんどなくコミュニケーションも取れない寝たきりの方がたくさんいらっしゃいます。
同じ病気の方ばかりというわけではありませんが、そういう患者さんたちに囲まれて毎日を過ごすのは
義父にとっては恐怖でしかないと思うのです。
近い将来の自分自身の姿を重ねたりしていないだろうか、そんな風に思ってしまいます。

Copyright(C) 2009 家族.com All Rights Reserved.